今更ですが、日本の電機機器メーカーの凋落に対し、サムソンの躍進は目を見張るものがあります。この原因として、よく言われているのが、新興国に対し低機能・低価格といった需要に適合した商品開発ということが言われておりますが、もう1点極めて重要な差があります。特に半導体生産設備投資を見れば分かり易いのですが、日本メーカーは市況が良くなると設備投資を行うのに対し、サムソンは極めて需給(市況)が悪い時に大型設備投資を実行します。いわゆる逆張りなのです。市況の悪い時に設備投資をすることにより、市況回復期においてフルにその効用を受け、日本メーカーに対しマーケットシェアを差をつけてゆく・・・。これに対し日本メーカーは、市況の良い時に設備投資の意思決定を行うため、当該設備が稼動する時には右肩下がりで、過大設備となってゆき、最悪の意思決定をする場合においては、どん底で設備圧縮を行なう・・・。まさに最悪ですね。
事業フィールドが、景気等の波動を受けているのであれば逆張りが正しく、本当の中期的トレンドに従ったものであればトレンドフォローでの投資が正しいのあるのですが、大きく下がっている時の精神状況は良くないものであるため、景気波動のものも中期トレンドのものと錯覚する方が圧倒的に高いと思います。逆に大きく上がっている時は、この素晴らしい時が永遠に続くと錯覚(=この状況では素晴らしいのが当たり前と感覚がずれだします)してしまい、やはり景気波動ではなく中長期トレンドで上がっていると思いがちになるものです。
人間の生まれ持った環境への順応性の高さといった本能により、間違った意思決定が行なわれ易いということを認識すると物凄いアドバンテージになります。
特にライバルがいる場合においては、多くのライバルが素直に自分の生まれ持った本能に大きくバイアスをかけられて意思決定してしまうため、この本能により歪められている部分がないか意識して修正することにより、決定的な差別化ができるのです。
先に述べた例(サムスンと日本メーカー)のように、投資の意思決定をより正しく行なうことはまさに企業の命運を決めるものであるため、このことは企業経営の最も重要なものの一つであります。
by 山沢