最近、IFRSの記事を良くみかけるようになってきました。
私自身は公認会計士ではあるのですが、会計基準自体に本当は興味ありません。実態は一つなのですから、それをどう表現したかだけの話で重要性がないからです。
ただ、実態を把握するために会計数値は必要ですので、そうはいっても利用はします。利用するに際し、会計数値は意味のあるものでないといけません。今までの会計数値は、そういった意味においてとても不完全なものでした。ですので、会社の実態を把握する時に、適切な資料があれば修正して利用したりします。
このIFRS今までの会計基準に比べ良くなると思いますが、まだ不十分なものであると思います。
会計基準は、本来どうあるべきかといった判断基準としては、あくまでも投資家が株主資本価値を算定するためのデータを提供すべきか否かの1点であると思います。株主価値の算定というと堅苦しいのですが、要は会社の実態をより提供するべきであるといったことです。
具体的には、会社の将来に向かっての経常的な利益獲得能力の提示、該当期間に稼ぎ出した本当の利益、そして会社の保有する本当の財政状況(=貸借対照表)が会社を評価する際に必要なデータとなります。
今までの会計基準においては、大きく2つの問題がありました。まず、(1)会社の経常的な利益獲得能力を示していない。具体的には連結ベースでの経常利益は子会社における少数株主持分の損益が紛れ込んでおり、指標とならなりません。単体決算は、当然対象会社の子会社の利益の持分相当分が反映しないため論外です。(2)次に対象会社の保有する資産・負債の時価変動部分の損益が反映されていないことです。経営者は、当然保有資産の時価ベースでの価値のマネジメント責任があるため当然時価変動損益は含めて評価されなければなりません。(=だって、例えば土地を取得し、その土地を使って利益を出しても、土地価格が同額下がったら、何も価値を生み出してないのですから、そういったことも考えて経営者は行動すべきですよね!)
コーポレートファイナンス上も会社の評価指標は全て時価ですので、以前から会計は全面的に時価導入すべきと思っておりましたので、IFRSの時価導入はとても正しい道ということです。
ただ! 経常的損益を示す段階利益表示がないことは理解し難いものです。現在でも大問題である少数株主持分の取り扱いがそのままの上、経常利益表示がなくなり、営業利益の前に特別損益までも含められたら、営業利益は単に今期稼いだ本業の利益といった意味のみを示すだけになってしまうからです。何を言っているかというと、ここで表記される営業利益は単なる過去の数値であり、過去は会社への投資判断上全く関係なく、重要なのは将来稼ぐであろう営業利益の期待値を表示すべきであるからです。過去で重要なのは現在保有する財政状態(=B/S)だけなのですから・・・。(なぜ、時価ベースでの貸借対照表が重要かというと、保有する資産・負債から利益の獲得能力を推察できるor稼いだ利益の多寡を判断できるand業績悪くなった場合の耐久力や清算時の配当額の指標になるからです。)
個人的意見としては、営業利益の前にやはり経常的利益(ここでの経常的利益は今までの経常利益ではなく、営業利益から特別損益を除いた損益といった意味です)は残し、少数株主持分損益も経常的利益と特別損益と法人税等の3区分にしてそれぞれの段階利益に反映すべきであろうと思います。
いずれにせよ、会計基準の方針自体は経営者や公認会計士等が携わるものではなく、投資家(=投資家の代弁者として証券アナリストや企業評価を行なう者達)によって導かれるべきなのではないかと思います。